第三話:オブシディアンローズ

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シド・ジャック♂:


本編主人公。

きちっとした身なりに丁寧な言葉使い、探偵事務所に勤務するメカクレの好青年。

優れた教養に加え、教材にしてもいいレベルの流暢なイギリス英語で話す異国からの来訪者だが

その裏の顔は 霧の夜に現れる怪人、ジャック・ザ・リッパー。

1メートルはあろう禍々しい鉤爪を有した異形の左腕を揮い 闇を駆ける人外の者である。



ミランダ♀:


赤と黒を基調にした独特なメイド服でシドの世話を焼く謎の使用人。

料理の腕は王宮コックレベル。 スイーツもしかり。

シドに嫌味二歩手前なツッコミを連発するが、全面的に彼を支える姿勢を崩さない優秀な家守。

主の一声で何処からともなくありとあらゆる拷問器具を顕現させる手品師のような能力を持つ。

よく見ると物凄い美少女である。



男・アルフ♂:


月光の下、夜を跋扈する人狼族。

ルーシーを助けに駆けつけたシドが割って入るカタチで初対面を果たし

シドには腹を抉られ、ミランダには拷問フルコースをお見舞いされた不憫な男。

騒動の後 彼らを自らのアジトへと招く。

喧嘩を売る相手が悪過ぎたが、ミランダのフルコースを耐え抜く驚異的なタフネスに加え

突出したスピード、膂力、惨忍性を具える殺しのエキスパートである。



ダニエル♂:


義賊団"黒曜の薔薇"にて研究と作戦指揮を担うブレイン。

烈火の如く回転する口と頭脳が良くも悪くも彼の持ち味。

表立って作戦に参加する事はないが、卓越した情報収集・処理能力に加え

多少の医術の心得もある 優秀なサポート要員である。

亜人でもない彼が何故"黒曜"に所属し、悪を裁いているのかは謎。



女・レイラ♀:


"黒曜の薔薇"では主に視察と交渉を担当しているという謎の美女。

常に斜に構えて人に接する、云わばツンなお姉様である。

鋭い観察眼を持ち ダニエルとはまた違った視点にて考察を展開する。

独特な雰囲気を漂わせているが、その正体は果たして―――



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シド♂:

男・アルフ♂:

ダニエル♂:

ミランダ♀:

女・レイラ♀:


320台本


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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




【南の工場跡正門前にて】




男:

よう、時間どおりだな。


シド:

こんばんは人狼さん、一週間ぶりですね。


男:

アルフレッド、俺はアルフレッドだジャックザリッパー。

好きに呼んでくれて構わねぇ。


ミランダ:

ジャックザリッパーではありません。

ご主人様の御名はシドルファス様です、違えませぬよう。


男:

ケッ テメェも来てたのかよ… そりゃあ来るか。


ミランダ:

ミラっちです!


男:

あ?


ミランダ:

私の名はミラっちです、以後お見知りおきを サーアルフレッド。


男:

……あっそ。


ミランダ:

なんですかその不服そうな顔は。


男:

こちとらテメェに半殺しの目にあって、やっと傷が癒えたトコなんだよクソッタレ!

ぜってー名前で呼ぶモンか! あぁ嫌だね、テメェなんぞクソガキで十分だぜッ


ミランダ:

では私も貴方の事は今後、犬ッコロと呼ばせていただきますね。


男:

なんだとこのクソアマ…!


ミランダ:

なんですか? まだ躾が足りませんでしたか?


男:

ぐぬぬぬぬ。。


ミランダ:

んん~~??


シド:

ふむ、さてアルっち。


男:

ア、アルっち…!


シド:

あら、お嫌でしたか? んー、、ではアルフレッド。 早速ですが貴方がたの根城にご招待いただいても?


男:

…ゴホンッ ああそこの森を入って行った先だ、ついてきてくれ。


ミランダ:

―――アルっち! ※小声で


男:

うっせぇぶっ飛ばすぞ…! ※小声で


シド:

フフッ お二人は仲良しさんですねぇ~


ミランダ・男:

いえ、違いますッ




【薄暗いランプだけが扉を照らす こじんまりとした建物の前にて、アルフが扉をノックしている】




男:

コン、コココン、コン ※ノック音

俺だ。


ダニエル:

やぁやぁよく来たねぇ!オブシディアンローズへようこそ!! ※間髪入れずに勢いよく扉を開けて登場

僕の名前はダニエル!此処の研究全般とポーション製造及び作戦指揮なんかを担当してる!

メンドクサがりなアルフが自分からエスコートを買って出るなんてどんな悪魔のような人かと思えば

なんとも気品漂うイケメンさんに、これはこれは可愛らしいフロイラインもご一緒じゃあないか!

ささ、まずは中へ!最近赤土から珈琲を錬成するのに凝っててね!二人の口に合うt――あ痛ぁ!

誰だい此処にこんな…ああ昨晩の僕かな!?アハハ! ※だんだん遠ざかりながら


ミランダ:

…なんとも蒸気機関のようなサーですね。。


アルフと呼ばれた男:

あんなんでも一応頼りにはなる男なンだがな…、まぁ入ってくれ。


シド:

赤土から錬成抽出した珈琲… う~む興味に堪えません!

さっそく参りましょうッ


アルフ:

お、おう。




【アジト内、中央にある散らかった大型テーブル上の一部をどかし饗しの準備を続けるダニエルと壁際に佇む女性がいる】




シド:

お邪魔いたします。 …わぁ~、素敵な処ですねぇー!

拠点感が強い室内でありながら、しっかり換気が行き届いていて観葉植物まで… ん~~オシャレですッ

あ、こんばんはレディー!


女:

こんばんは、ミスター。


アルフ:

よ~、何か変わったことは?

アイツは帰って来てンのか?


女:

なんにも。

彼はとっくに帰還して、今は地下よ。


アルフ:

そうか。 今回は自力で戻ってこれたンだな。


ミランダ:

近隣200メートル付近に"人間"と思われる気配は我々以外に3人。 ※小声で

此処の3名とおそらくは。


シド:

うん、ちゃんと認識してるさ。

地下の人ならざるモノの事もね。


ダニエル:

さぁ少し狭いけど掛けてくれ! 焼き菓子はお好k…そうな顔してるね!

自慢の珈琲と共に召し上がれ!


シド:

ではご厚意に甘えさせていただくとしましょうッ 


ミランダ:

感謝を。 ※二人とも着席


アルフ:

俺にもエールかなんか入れてくれるかぁ~。


ダニエル:

任せたまえよ! レイラも何か飲むかい??


レイラと呼ばれた女:

結構よ。


ダニエル:

了解!




【室内のレイラ以外全員がテーブルに着いている】




シド:

これはまた独特な苦みの中に仄かな酸味と甘みがブレンドされて…

クッキーにも―――ハッ これはダンカンのプレーンですね!? ボリボリ…うん、美味ひいッ ※モグモグしている


ダニエル:

あはは! どうやらミスターは甘い物に目がないとみたね!

ダンカンは鉄板だよね~お目が高い!


ミランダ:

当家でお出しする際は、おもにハニーかメイプルですからね

プレーンは久しぶりです。


シド:

ん… ゴクンッ 至福でした!

ダンカン好きに悪い方はおりません、さっそくお話を伺おうではありませんか。


ダニエル:

お! つかみはオッケーってところかな??(笑)

ではまずは自己紹介から始めようか!

あらためて僕はダニエル。 ダニエル・ピエーロ・ダ・ヴィンチさ。


シド・ミランダ:


ダニエル:

そ! 僕はヴィンチ村出身のしがない発明屋さ。

ご先祖さまたちのように芸術の才能は無かったみたいだけどね(苦笑)

僕がプランの指揮を任されてるのはさっきも言ったけど

その他には、今ご覧に入れてるこういう小さな錬成から

"アトリエ"を使った大規模な錬成も手掛けていてね!


シド:

アトリエ?


ダニエル:

此処の地下にはわりと広い研究設備が整っててね。

僕らはアトリエって呼んでるんだけど

おもに其処では"細胞組織の錬成"を研究してるんだ!


シド:

なるほど… 解ってきたぞ。


ダニエル:

非人道的な事は何もしてないと声を大にして言いたいね!

どちらかというと治療、蘇生という観点に重きを置いてるのさ。 闘争に怪我はツキモノだからね!


ミランダ:

サーはメンバーのバックアップサポートを担ってらっしゃるのは理解しました。


ダニエル:

ダニーでいいよ フロイライン!


ミランダ:

ではダニー、先程其方のデイムが「彼は地下」とおっしゃいました。

我々の見解ですと 地下に"人"はおそらくは存在しない―――

「彼」とは、貴方の造り上げたナニカ…なのですか?


ダニエル:

ある意味そうとも言えるが、ある意味そうじゃあない。

少なくとも「彼」は人間だったさ… 上流階級のクズの見世物として野犬に食い殺されるまではね。


ミランダ:


ダニエル:

消えて無くなるハズだった「彼」に

僕は持ち得る全ての知識と技術を注ぎ込んだ。

そして「彼」は今 確かに此処に存在しているのさ。

共に語り、共に食べ―――れはしないか(汗) ※頭を掻く

共に闘っている大事な仲間の一人、一人の"人間"なんだ。


ミランダ:

…貴方の事を少し誤解したようですダニー、申し訳ありません。


ダニエル:

いいんだフロイライン、解ってくれて嬉しいよ!

それに キミにボロボロにされたアルフの体内細胞の組織再生なんかにも役立ってるんだよ?(苦笑)


ミランダ:

謝りませんよ犬ッコロ。


アルフ:

なんでだよッ!


シド:

ダンカンを嗜む貴方が血も涙もないマッドサイエンティストではない事は

私の舌が一番理解してますよ。 どうか続きを。


ダニエル:

フフッ どうやら僕らは仲良くなれそうだねミスター♪

さて、僕自身の紹介はざっとこんなところさ。

次は一応そこでエールを呷ってる強面の番だけど…

ぶっちゃけもう察しはついてるよねぇ~(苦笑)


アルフ:

俺は人狼族ハイランダー種、所謂ライカンスロープってヤツよ。

元々ロンドンマフィアの用心棒みてぇな事やって食ってたンだが

その元締めのクソ野郎、道で遊んでるガキンチョが靴にハネぇ飛ばしたって

ウェブリーでドタマぁぶち抜きやがった。

俺ぁ次の瞬間 その場にいた連中を皆殺しにしてたさ。 ゴッゴッ―――ゴッ ぷう…。 ※エールを一気に飲み干す

以来、えれー数のお仲間さんに追われるハメになってな

さすがに街ン中には居れなくなった俺が身を寄せたのが此処ってワケだ。

コイツには何かと世話になってるからな、成してぇことがあンなら手伝ってやりてーんだ。


ダニエル:

ね!? 見掛けに寄らず良い奴だろう?

ただのツンデレなんだよねアルフってば!(笑)


アルフ:

喧しいッ 首だけ出して庭に埋めンぞ。


シド:

なるほど、山岳地帯高地に拠を構える勇猛なハイランドの民でしたか…

どおりで並の人狼に比べ発達した強靭な鬣をお持ちの筈だ。

パワー、スピード、タフネス全てにおいて並の人狼を凌駕する所以は明白ですね。


アルフ:

まぁ、オマエさんの動きは俺には視えなかったがな。


シド:

アルフと呼んでも?


アルフ:

好きにしろと言ったろ。


シド:

アルフ、私たちは一つ問わねばなりません。

貴方はルーシーさんをその手に掛けようとした。

彼女は恩義ある大切な友人。 今後、もしも再び彼女に危害を加える可能性が微塵でも存在するのであれば

申し訳ありませんが 我々は貴方がたとは敵対せざるを得ない。


アルフ:

あぁ、そいつは謝る 悪かった。

殺すつもりなんてなかったよ、真っ当に生きてる女子供をヤるのは流儀に反するからな。

消すって言ったのは… "記憶"のことだ。


ダニエル:

ミ、ミスター! 僕からも弁明させてくれたまえッ

僕はアトリエで活動に役立つアイテムを生み出すべく日々尽力してる。

今まで実用段階にまで至ったモノの中に、コイツがある――― 名付けて"忘却の粉塵"だ!

細かい事は省くとして、要はおもにベンゾジアゼピン系と中濃度のクロロホルムを混合させてるんだけど

この容器でパフュームを吹き付けるみたいに使用すると

一回の吸気で数十分の昏睡状態に陥り、目が覚めた頃には

気を失う前の凡そ同時間分の記憶が丸っと抜け落ちるってワケ!

ちゃんと臨床試験もクリアしてるよ、つい今朝だって突然アルフがアトリエに来て

徹夜四日目に差し掛かった僕に「テメーはいい加減ネロ」ってムチャクチャに振り掛けてきてね!

見事についさっきまで半日グッスリさ。 そのせいで自分で置いた薬品サンプルの詰まった木箱を蹴飛ばしちゃったけどね!


アルフ:

俺ぁあの嬢ちゃんに、コイツで眠り姫になってもらおうと思ってただけだ。

ぶっ殺そうとしたワケじゃあない。

ま、どっかの誰かサンにボロ雑巾にされた挙句サツに面が割れちまって

俺も目出度くお尋ねモンだけどなぁ。


ミランダ:

それは貴方の喧嘩っ早さと説明不足の代償では?


アルフ:

だから悪かったっつーの…!


シド:

では、今後一切彼女に手を出さないと約束できますか?


アルフ:

ああ近づかねーよ、"マナガルム"に誓ってもいい。


シド:

! ……解りました、貴方の宣言は信用に値します。

イイでしょう 気に入りました。 我々は全面的に協力するとしましょう。


ミランダ:

ご主人様、マナガルムとは確か…


シド:

ああ 人狼族の信仰神にして月狼の始祖、彼らの絶対的な象徴だ。

彼は約束を違えない。 二度とルーシーさんには近づかないだろうさ。


ミランダ:

知識至らず申し訳ありません。


シド:

気にしないでよ、私はマニアックだからね(笑)


ダニエル:

その言葉を聞けて嬉しいよ!

改めてヨロシクねミスター…っとぉ――― え~っと、、、


ミランダ:

今度は私らの番… という事ですね、サー?


ダニエル:

よければ是非とも聞かせてもらいたいなッ! ん…ゴホンッ ふぅッ ※椅子に座り背筋を正して一呼吸つく


ミランダ:

ご主人様、宜しいでしょうか?


シド:

構わないよ、見せてあげて。


ミランダ:

…畏まりました。


アルフ:

いよいよマジシャンの種明かしタイムってかァ? ※少し興味深そうに


ダニエル:

、、、、、ゴクリッ ※緊張した面持ちで


ミランダ:

本来ならば主君の紹介が筋ではありますが、"我々"という者をご理解いただく為に

このミランダの真像にて語らせていただきましょう。

―――コホンッ

我が主、シドルファス様に仕えるメイドのミラっちとは仮の姿!

今こそ真の姿をご覧に入れましょうッ

私たちは曰く"夜を歩く者"、"朱に染まりし者"、"永劫を生きる者"……"闇を統べる者"。

血への渇望は懇願にして崇拝―――【change】 ※以降高貴な吸血鬼カーミラに変化

己が主君への忠誠に他なりません。

我が真名はエリザベート、人呼んで吸血妃(きゅうけつき)カーミラと申します…

以後お見知りおきを。


ダニエル・アルフ・レイラ:

!!!


アルフ:

て、"鉄の処女"のカーミラ…か…!?


レイラ:

ブラッドバスの魔女…


ダニエル:

伝説の、ドラキュリーナ…!


ミランダ:

では括目してください、我らミディアンの王たる主君 シドルファス様を。

此の御方こそが――――――


ダニエル・アルフ・レイラ:

!!!!!!!!!!!!!




【三人は畏まり、下を向いてカタカタと震え動揺を隠せない】




アルフ:

よ…よく俺生きて還ってこれたな… ※遠い目をしながら小声で


レイラ:

だ、誰よ いざとなれば"催眠の粉塵"で言う事きかせようとか言ってた馬鹿は…ッ ※小声で


ダニエル:

僕ですゴメンナサイ…ッ ※小声で


アルフ:

そもそも幻惑剤なんぞ効くタマじゃねぇじゃねーか…ッ ※小声で


ダニエル:

全部僕の浅はかさ故の認識の甘さだ、、、ちょっと首出して埋まってきます…ッ ※小声で


レイラ:

それはアルフのセリフでしょう…ッ ※小声で


アルフ:

茶化すな…! 俺らなんぞコンマであの世だゾ…ッ ※小声で


シド:

そんな事しませんよッ どうか顔をあげてください(汗)




【各々ゆっくりと上目使いにシドたちを見上げる】




アルフ:

…あのぉ~、、、ひとつ訊いてもいいっスかねぇ…?


シド:

今までどおりに、アルフ。。(汗)

どうぞなんなりと。


アルフ:

…ん、ゴホンッ じゃあお言葉に甘えるぜ。

ジャックザリッパーなんて"イチ殺人鬼"がアンタのハズがねぇ。

やっぱりオリジナルのジャックは、アンタがヤったのか…?


シド:

えぇ、私たちがロンドンにやってきた頃

彼はまさしく3人目となる女性を殺めた後、次のターゲットを吟味している最中のようでした。

無垢の民を惨殺し 死体を損壊する異常者…

此処での我々の最初の"仕事"が成されるには十分でした。


ミランダ:

以降我が主はこの地に定住なさり、本格的に粛清を開始なさいました。

それにはジャックザリッパーの存在は大いに役立っているのです。


アルフ:

なるほど…な。


レイラ:

シドルファス卿の思想と、私たちの成さんとする目的との方向性は近しい物があると存じます。

予想を逸脱したカミングアウトに聊か気が動転してしまいましたが

この上ない盟友を得て嬉しく思います。 卿が"ジャック"で本当に良かった。


シド:

光栄ですよレディー。 …あぁ皆さんフレンドリーにいきましょうフレンドリーに、ね!(汗汗)

して、宜しければ貴女の事もお伺いしても?


レイラ:

では…。

勿論構わないわ、私はレイラ。

此処ではおもに視察と交渉を任されている… "ゴルゴンの力を施された者"。


シド・ミランダ:


シド:

…なるほど、貴女から仄かに感じ取れる神性の由来は"ソレ"でしたか。

ですが "施された"とは?


レイラ:

さる研究施設で秘密裏に執り行われている人体実験の成れの果てよ。

今、ロンドンは蝕まれつつあるの

人々が想像もできない程の 絶望的な存在にね…。





To be continued

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